大学紹介学長 令和6年年頭挨拶
令和6年の年頭に当たり,地域社会のみなさまに一言ご挨拶を申し上げます。
はじめに,元日に発生した令和6年能登半島地震により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに,被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。
さて本学は,新体制になって三ヶ月が経過しました。これまでの成果と課題を整理しつつ,今後に向けた検討を開始したところです。
学長選考にあたっての所信の中で,本学の目指すべき到達点として,「北海道教育大学のミッション?ビジョン」※1を踏まえ,「教職員や学生等のすべての構成員がそれぞれの専門性を高め,教員養成や地域人材育成,教員研修,地域的教育課題の解決,地域創生や地域社会の発展に向けて,その専門性を積極的かつ有機的に生かすことにより,地域社会の発展や高度化に貢献し,本学の存在が地域にとって必要不可欠なものになること」と掲げました。このような到達点を設定した背景には,人口減少という課題があります。国立社会保障?人口問題研究所が発表した推計人口によると,現在約510万人である北海道の人口は2050年に382万人となり、対2020年比で約3割の人口が減少します。上の到達点を掲げたのは,18歳人口の減少という大学にとっての課題のみならず,地域社会が維持できるのかという危機感があります。北海道教育大学は,5つのキャンパスが北海道全域をカバーして人材育成に取り組む唯一の大学です。このことを再認識し,目指すべき到達点に向けて,一歩一歩前に進んでいきたいと思います。
その最重要項目に「教員養成の高度化」が挙げられます。「令和の日本型学校教育」で謳われている「全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと協働的な学びの実現」に欠かせないのは,質の高い教員の養成です。学部では,札幌校?旭川校?釧路校の教員養成課程において令和5年度からカリキュラムを改定し,「省察を媒介とした,実践と理論の往還を実質化させるスパイラルカリキュラム」による令和の日本型学校教育に対応した実践型教員養成を開始しました。同時に,実践型教員養成を牽引する,キャンパス間の連携?協力のハブとしての「教員養成イノベーション機構」を新設しました。教職大学院では,研究力に支えられた高度な実践力を備えた教員の養成を学部直進者に対して展開するだけでなく,広大な北海道の各地の現職教員が勤務地を離れることなくオンラインで学べるよう,北海道教育委員会の大学院研修派遣制度に対応した「遠隔履修制度」を設定しました。さらに,子供の教育を取り巻く社会状況や学校教育が抱える課題の複雑化を鑑みると、「教員養成の高度化」には,臨床的な研究力と教員養成の学識をともに備えた専門性豊かな大学教員の育成が急務であり,その育成を担うため,複数大学による共同教育課程という制度を活用した博士課程の設置に向けて鋭意取り組んでいるところです。
現場ニーズに対応した質の高い教師を安定的に養成することも本学の使命です。本学では,教育委員会と連携し,高校生の教職への関心?理解を深める取り組みを実施しているところですが,北海道では,とりわけ地方の教員確保が課題になっていることから,大学入学前から在学中,教員採用に至るまでの一貫した取り組みについて検討を開始します。
地域創生や地域社会の発展という点では,例えば,函館校の国際地域学科では,地域の課題解決能力を高めることを目的として大学が地域課題の診療所となる「ソーシャルクリニック事業」などが,岩見沢校の芸術?スポーツ文化学科では,音楽?美術?スポーツの原点である「あそび」をテーマに大学が有する資源を活かして地域文化の創造と発展に貢献する「あそびプロジェクト」などが展開されています。今後も,地域のニーズを踏まえつつ,大学の教育研究の成果を,地域社会の活性化や発展に活かしていきたいと思います。
変化が激しい予測困難な社会であっても,Well-beingな社会の実現にとって教育が要であることは論を待ちません。私たち北海道教育大学の構成員は,教育研究に携わっていることに誇りを持って,また変化を恐れることなく力を尽くして参りますので,地域社会のみなさまのお力添えをどうかよろしくお願いいたします。
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令和6年 年頭
北海道教育大学長 田口 哲
※1 /intro/concept/